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脱マンネリ! 梅ごまだれの豚しゃぶ - 朝日新聞社

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくださるという夢の連載。今回はひんやり冷たいしゃぶしゃぶ。いつもとは風味を変えた、爽やかな梅ごまだれで仕上げます。

     ◇

―― 冷水先生、こんにちは。引き続き暑い日が続きますね。こうも暑いと、いくら食いしん坊の私でも食欲が出ません……。

冷水 あらあら、それはいけませんねえ。

―― 料理するにも火を使うとよけい暑くなるので、困ったものです……。

冷水 今日は暑いときのお助けメニューをご紹介しましょうか?

―― え!?

冷水 火を極力使わずにさっと作れて、さらに食欲も湧くような。

―― なんともありがたい!

冷水 では暑い時期の定番メニューの豚しゃぶをさっぱり、爽やかなタレで食べましょう。野菜を切って、タレを混ぜて、あとは豚肉を茹(ゆ)でるだけですから、とっても簡単ですよ。

―― 本当に助かります。

脱マンネリ! 梅ごまだれの豚しゃぶ

こちらが花椒(かしょう)オイル。鍋で煮るときは、花椒の実が黒くなったら火を止めるサインです

冷水 今回のポイントはタレに入れる花椒(かしょう)オイルです。これが入ることでピリッと辛くて、香り高い風味になるので、ぜひ作ってみてください。

―― 花椒と太白ごま油を小鍋に入れて煮るだけなんですね。これは簡単!

冷水 豚しゃぶ以外にも蒸したお魚や和(あ)え麺にかけて食べてもおいしいので、重宝すると思いますよ。

―― 花椒のスパイシーな香りで食欲をそそりますね!

冷水 次にタレを作っていきましょう。材料が少し多いですが、どれも家庭にあるものですし、切って混ぜるだけなので手軽です。

―― 梅干しや黒酢、しょうが、にんにくなど、なんだか元気の出そうなラインナップですね。

冷水 タレに入れる水は、茹で鶏などを作ったときに保存しておいた茹で汁を使うと、より旨味(うまみ)が出て、おいしく仕上がりますよ。

―― わ、なるほど。それもいいですね。

脱マンネリ! 梅ごまだれの豚しゃぶ

しょうがと長ネギのみじん切り、にんにくのすりおろし、梅干しなどを混ぜて作るタレ。蜂蜜などを使った甘い梅干しの場合は、少し塩を入れて調節してください

冷水 花椒オイルは大さじ1くらいが目安ですが、辛いのが好きな方はもう少し増やしてもいいでしょう。お好みで調整してください。

―― 野菜はかいわれ大根や大葉、バジル、きゅうりなどが用意されていますが、何を使ってもいいんですか?

冷水 はい、お好みのサラダ野菜で大丈夫ですよ。ルッコラでもレタスでも。大葉やバジルなどを入れると爽やかな感じになるのでおすすめです。

―― バジル、いいですね~! 

冷水 きゅうりはスライサーで薄くスライスして、しばらく氷水にさらしておくとパリッとした食感になりますからね。

―― 野菜の種類が多いと色々な食感や香りを楽しめてよさそうです。

冷水 タレと野菜の準備ができたら、あとはもう豚肉を茹でるだけです。

―― ええ~! この連載始まって以来の簡単さじゃないですか!

脱マンネリ! 梅ごまだれの豚しゃぶ

薄くスライスしたきゅうりは氷水にさらしてパリッとさせると心地いい食感になります

冷水 だって暑くて料理したくないって言うから(笑)。

―― これはもう早速、今晩のメインディッシュにします!

冷水 豚肉はしゃぶしゃぶ用であればどんな部位でもいいですよ。今日はロースとバラを半量ずつ使いましょうね。茹でる前にお酒を振りかけておくと肉の臭みが取れます。

―― あれ先生、お湯が沸騰していますが茹でないんですか?

冷水 沸騰したお湯にお肉を入れると、瞬間的に火が通ってお肉が固くなってしまうんです。しっとりやわらかく仕上げるには80度くらいが適温ですので、沸騰後に火を消して、しばらくお湯を冷まします。

―― たしかに、慌てて茹でるとお肉がカチコチになってしまいます……。冷ませばよかったんですね。

冷水 お肉を入れていきますね。一度にたくさん入れるとお湯の温度が下がってしまうので、お鍋の中でお肉がひらひら、ゆらゆらするくらいの量を入れていきます。

―― わ~、いつもみたいにお肉がぎゅっと固まりませんね、すごい!

冷水 あまり長い時間茹でると固くなってしまうので、お肉が白っぽくなったら引き上げます。

脱マンネリ! 梅ごまだれの豚しゃぶ

茹でた豚肉はキッチンペーパーの上で水分を切り、冷まします。鍋の中で団子状にならないよう、少量ずつ茹でていきましょう

―― あれ? 茹でたお肉はキッチンペーパーを敷いたバットに取るんですね。てっきり氷水で冷やすのかと思ってました。

冷水 水に入れてしまうとお肉が水っぽくなってしまうので。キッチンペーパーの上でしばらく休ませて冷ましつつ、水分も切っていきます。

―― 一気に冷やそうと思わなくていいんですね。

冷水 完全に冷えていなくてもおいしく食べられますから、大丈夫ですよ。さあ、あとは野菜と一緒に器に盛って、タレをかけて完成です。

―― うわ~、ガラスの器に盛ると、とっても涼やかですね。

冷水 そう、器も涼を感じる大切な要素ですよ。

―― お肉がとっても柔らかくて、今までの豚しゃぶはなんだったんだ!?って感じです(笑)。茹でる温度が大切なんですね……。

冷水 ふふふ。タレはどうですか?

―― 今まで豚しゃぶ=ポン酢味だと思い込んでいたので、これはもう別の料理のような感じがします。練りごまのコクと梅干しのさっぱりした感じが絶妙で、豚肉によく合いますね。お箸が止まりません!

冷水 食べ進めていくと、ときどき花椒のピリッとした刺激があって楽しいでしょう?

―― 大葉やバジルの風味も清々(すがすが)しくて、爽やかさが一皿の中に凝縮しているような感じです。これがあれば今年の夏を乗り切れそうです!

今日のレシピ

豚しゃぶ 梅ごまだれ

◎材料(2~3人分)
豚肉しゃぶしゃぶ用:100g
(今回はロースとバラを半量ずつ)
酒 適量 
野菜 好みの量

《梅ごまだれ》

長ネギ(みじん切り) 15cm分 
しょうが(みじん切り) 1片分 
にんにく(すりおろし) 2/3片分
梅干し 10g(約1個) 
黒酢 大さじ2 
練りごま 20g 
しょうゆ 20ml 
水 25ml
砂糖 小さじ2 
粉唐辛子 適量 
花椒オイル 大さじ1
  
◎花椒オイルの作り方
小鍋に花椒を大さじ1、太白ごま油大さじ1を入れて弱火にかける。花椒が赤黒くなって香りが立ってくるまで煮る。

◎作り方

 梅干しは種を取り除いてペースト状に叩き、の材料を全て混ぜ合わせて梅ごまだれを作る。

 豚肉に酒を適量かけて80度くらいの温度の湯でさっと茹でる。

 好みの野菜との豚肉を盛り付け、梅ごまだれを適量かける。

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(料理・レシピ 冷水希三子 写真 関めぐみ 文 小林百合子)

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冷水希三子(ひやみず・きみこ) 料理家

脱マンネリ! 梅ごまだれの豚しゃぶ

料理家・フードコーディネーター。レストランやカフェ勤務を経て独立。季節の食材を使ったやさしい味の料理が評判を呼び、雑誌や広告などで活躍中。器選びや盛り付けに至るまで、その料理の美しさでも注目を集めている。著書に『ONE PLATE OF SEASONS-四季の皿』(アノニマ・スタジオ)、『スープとパン』『さっと煮サラダ』(ともにグラフィック社)など。

PROFILE

  • 小林百合子

    編集者
    1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

  • 関めぐみ(写真)

    写真家。アメリカ、ワシントンDC生まれ。スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。

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August 27, 2020 at 08:13AM
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