「伝説の家政夫」に便利すぎるストック食材を教わった
昨年の春に『メシ通』に登場していただき「みそ汁を劇的においしくさせるための基礎知識」をレクチャーしてくれた、和食のプロ・五十木剛人(いそぎ たけと)さん。
実はその後、出版社から依頼があり、ご本人監修のレシピ集を発売することになったそうなのです。
しかもそのレシピ集、『メシ通』の記事「【和食のプロに教わる】みそ汁を劇的においしくさせるための基礎知識」が出版のきっかけだとか!
ま、ま、ま、まじですかー!?
というわけで、再びご登場いただき、新刊についてのお話をいろいろお聞きするとともに、せっかくなので、簡単に作れて、冷蔵庫にストックしておくと、いろいろアレンジ可能で便利なストック食材【鮭とキノコのバター醤油焼き】と、それを使ったアレンジ2品のレシピを教えていただきました!
「和食は難しくない」
▲懐石料理店、割烹などで20年以上、和食の料理人としてのキャリアを積んだ後、現在は経験豊富なハウスキーパーと家事を依頼したい人が出会える家事代行マッチングサービス「タスカジ」にて、「出張料理人」として活躍中。一回の依頼で10品前後、プロの味の和食惣菜を作ってくれることが好評を呼び、★4.97(2020年3月現在)という高い評価を得ている
──お久しぶりです! そして初の著書、出版おめでとうございます! なんでも『メシ通』での取材が、この本の出版のキッカケになったということで、とても嬉しく思っています。
たけとさん(以下・たけと):ありがとうございます。そうなんです。記事を読んだ編集者さんからご連絡をいただいて。
──そんな展開があると思っていなかったので、ビックリしました。和食の本ということですが、せっかくなのでお料理を作っていただきながら、話を聞けたらなと。ところで和食って、ちょっとハードルが高いじゃないですか。
たけと:ハードル、高いですか?
──高いです。食べたら落ち着くし、飽きないし、ヘルシーなので、積極的に毎日のメニューに取り入れたいのですが、ちょっと難しそうで気負ってしまうというか。
たけと:そんなことないですよ。特に今回レシピをご紹介する【鮭とキノコのバター醤油焼き】は簡単だし、ストック食材として作り置きしておくといろいろリメイク出来るので便利だと思います。
──簡単で、しかもリメイクまで。
たけと:はい。難しいことは一切ないので、安心してください。まず材料はこちらです。
和のストック食材「鮭のバター醤油焼き」の材料
【材料(3食分)】
- 鮭 3切れ
- シメジ 1パック
- エノキ 1パック
- エリンギ 1パック
- マイタケ 1パック
- 薄力粉 大さじ2
- バター 15グラム
- いんげん 5〜7本くらい
- 醤油 大さじ2
- 酒 大さじ2
- サラダ油 大さじ1
たけと:鮭とキノコ、バター、小麦粉が基本の材料になります。キノコは好きな種類を好きなだけでいいですよ。種類が多めのほうが、より味が複雑になって美味しいと思います。今回は、シメジ、エノキ、エリンギ、マイタケを用意しました。
──キノコはローカロリーだから、たっぷりにするとよりヘルシーですね。
たけと:いろんな種類があったほうが食感が楽しめて、味わいもより深まるので、1種類よりは、数種類あったほうがいいです。4種類くらいが理想ですね。では、さっそく鮭を一口大に切ります。
──鮭はそのままじゃなくて、切るんですね。
たけと:はい。リメイクすることも考えると、そっちのほうがストック食材として使い勝手がいいんです。あと、焼き付ける面が増えるので香ばしさも増します。
──なるほど~。魚の焼き目って美味しいですよね。
- プロのコツ①鮭は一口大に切る
──大きな切り身のままだと、一食で食べきってしまわないといけない感じですが、これだとちょっとしたつまみだったり副菜として出しやすいサイズですね。
たけと:そうなんです。サイズ的にも食べやすいですしね。これにまずは薄力粉を薄くまぶしてください。
──薄力粉をまぶす意味ってなんですか?
たけと:粉をまぶすことによって、表面に味が染みやすくなるんです。カリッとした食感も加わるし、あとはタレにとろみもつきます。
- プロのコツ②薄力粉をまぶすこと
たけと:ちょっとしたことで、出来上がりが変わってくるんですよね。
──なるほど。そういうふうに意味を教えてもらうと、ちょっと面倒でも粉を振ろうかなって気になりますね。
たけと:では、これをサラダ油をひいたフライパンで、軽く焼け目が付くくらいに、皮目から中火で焼いてください。中まで火は通さなくてもいいです。
──皮目から焼くのはなぜですか?
たけと:和食では、皮を上に盛り付けるんですよね。だからだと思います。
──あー、なるほど! 見た目も美味しく見せるためですね。和食って綺麗ですもんね。
たけと:そうです。そして、いったん鮭をフライパンから取り出しておいて、お次はキノコです。シメジとマイタケは石づきを落とす。エノキは石づきを落とした後に、三等分。エリンギは一口大に。
──おお、すごい大盛り。ボリューミーですね。
たけと:ストックとして多めに作るって考えると、キノコも種類を増やせるかと。
──たしかにまとめて作ったほうがコスパもよくなる! 魚って1パックに二切れか三切れくらい入っていて、一人暮らしだと買いにくいけど、こうやって一度に調理してストックにするっていう手があるんですね。
- プロのコツ③キノコは種類多め(理想は4種類以上)
たけと:いちいち料理する手間も省けますしね。では、さっきの鮭を焼いたままのフライパンで、これらのキノコを炒めてください。火が通ったら酒を入れて、醤油とバター、さらに焼き目を入れた鮭を戻します。
──フライパンは洗わないで、そのまま使っていいんですか?
たけと:はい、後でここに鮭を戻しますし、洗い物は増やしたくないですしね。鮭を戻したら強火にし、水分を飛ばして味を凝縮させるイメージで焼き付けてください。仕上げに各2センチくらいの長さに切ったインゲンを入れて、ざっと30秒くらい火を通したら完成です。
──おおっ! バターと醤油の匂いが香ばしい……これって、冷蔵でどれくらい持つんですか?
たけと:濃いめに味をつけているので、3日か4日は問題ないと思います。
──冷凍だと?
たけと:あんまりしないほうがいいですが、7日くらいは美味しく食べられるかと。はい、出来上がりました!
──おおー、たっぷり! 和食って、ちょっと手間がかかる印象なんですが、実質フライパンひとつで出来るって、このメニュー、すごい気軽ですね。
たけと:はい。工程が多いとなかなか作る気になれないじゃないですか。今回出すレシピ集で紹介しているのも、家庭で作るっていうのがコンセプトなので、フライパンひとつで作れるものばかりです。工程もどれも3つくらいです。
──確かに「鮭とキノコのバター醤油焼き」も簡単ですぐに出来ました! しかも、作り置きしておいて、忙しい日は米さえ炊いてさっと味噌汁を作れば、それだけで立派な食卓になる。素晴らしい……というわけで、さっそく味見を。
たけと::どうですか、お味は。
──ああっ、美味しい。いや、美味しくないはずがない組み合わせなんですが、キノコが4種類入っている、というのがやっぱりキモな気がします。
エリンギのサクサク感、エノキのシャキシャキとろり感、シメジの旨味、そしてマイタケの香りが合わさって、まさにキノコがカルテットを奏でているといいますか……。
鮭もぎゅっと旨味が凝縮して、しみじみと美味しいです。
たけと:ありがとうございます。ただ、いくら美味しくても、連日だとちょっと飽きちゃいますよね。なので、これをアレンジして別の料理にしたいと思います。
──おおっ! では引き続き、そのレシピをお願いいたします。
たけと:はい。まずは【鮭とキノコの混ぜご飯】です。
アレンジレシピ①「鮭とキノコの混ぜご飯」
【材料(2合分)】
- 米 2合
- 出汁 400ml(※ただし通常の2倍のだしパックを使うこと)
- 醤油 大さじ1
- 酒 大さじ1
- バター ひとかけら
- 鮭とキノコのバター醤油焼き 上のレシピで作った分の3分の1くらい
たけと:まずは、鍋に400mlの水を入れて、だしパックで出汁を取ってください。だしパックは、明記されている量の倍量を使うのがポイントです。
──おおっ! 味噌汁の時と同じですね。美味しい和食のコツは、だしパックを倍量で使って出汁を取る。
たけと:はい。そこだけはケチらないで作ると、如実に美味しくなるので。余った出汁は味噌汁にも使えますし、冷蔵で2日~3日は持ちます。出汁が取れたら、冷ましている間に、お米を研いでください。
──あの……お恥ずかしいのですが、わたし、実は正しい米の研ぎ方っていうものを、いまいち知らなくて……。
たけと:洗うのではなく研ぐので、まず水を注いで、米ひたひたくらいまで捨てて、そして指先でシャカシャカシャカ、と。
──ああ、これが研ぐっていうことなんですね。完全にこれまで「洗って」いました……。
たけと:そうです。まぁ、最近の米は精米の技術が発達しているから、あんまり研がなくていいとも言われていますが。
──長年の謎が解けました。米の研ぎ方なんて、いまさら誰にも聞けなくて……。
たけと:それはよかったです。出汁が冷めたところで、研いだ米に酒大さじ1、醤油大さじ1、そして2合のところのメモリまで出汁を入れて、さらにバターをひとかけら投入してください。
──追いバター! 米にバターって合いますよね……(うっとり)。
たけと:あとは普通に炊いてもらって、炊き上がったら【鮭とキノコのバター醤油焼き】を混ぜ合わせて出来上がりです。
──これはバターのお陰でしょうか。お米がつやつやです。鮭とキノコの旨味が米に染み込んで、これは何杯でもいけてしまうヤツ……。【鮭とキノコのバター醤油焼き】を夕食にした場合、翌朝はコレを仕込んでおけば、もう朝から幸せいっぱいでスタート出来そうです。
たけと:今回は炊き込みにしましたが、炭水化物と合わせて一品料理にリメイクするとすれば、焼きうどんやパスタの具材にしてもいいですね。もちろんチャーハンの具にも出来ます。
──鮭とキノコのバター醤油焼きの汎用性の高さ、ハンパない!
たけと:つまみ方向にアレンジすることも可能です。というわけで、アレンジレシピ2品目は【鮭とキノコとじゃがいものチーズ焼き】です。
アレンジレシピ②「鮭とキノコのじゃがいもチーズ焼き」
【材料(1人前)】
- じゃがいも 2個
- スライスチーズ 2枚
- 鮭とキノコのバター醤油焼き 上のレシピで作った分の4分の1から、3分の1くらい
たけと:まずはじゃがいもをふかします。洗って半分に切ってラップで包み、柔らかくなるまで、レンジでチンしてください。
──皮はそのまま?
たけと:はい。ふかしてから剥いたほうが楽なので。
──そっちの方が薄く剥けるから、ロスも減って環境に優しいですね。
たけと:ただ熱いので、それが嫌な人は、剥いてからチンでも大丈夫です。
──そのあたりは適宜好みで。
たけと:皮を剥き、火の通ったじゃがいもが出来上がったら、それを潰してください。
──あの、我が家にはマッシャーがないのですが……。
たけと:フォークで大丈夫です!
──あっ、ホントだ!!!
たけと:【鮭とキノコのバター醤油焼き】と混ぜ合わせて、グラタン皿に盛ったら、上にチーズを乗せて焼くだけです。
──これはもう、このままの状態でも美味しそうですが。
たけと:鮭とキノコの和風ポテトサラダとして、それはそれでありですね。あとはこれをタネにしてパン粉の衣をつければ、コロッケにもなりますが、今回はチーズ焼きにしましょう。じゃがいもも鮭もキノコも火が通っているのでチーズが溶けるまで、電子レンジのグリル機能で焼いてください。
▲彩りに、お好みで乾燥ディル(分量外)を。パセリやバジルなどでも可。もちろんなくても大丈夫
──パーティーに出しても遜色ない、おつまみが出来ました!
たけと:おもてなし料理にするなら、シチューにすることも出来ますし、最終的には味噌汁に入れて石狩鍋風にするのも美味しいと思います。
──すごい……もう一度言わせてください。鮭とキノコのバター醤油焼きの応用力、ハンパない。
たけと:ありがとうございます。
──こちらこそ、ありがとうございます。ところで、和食の良さってなんですかね。
たけと:やっぱり旬を感じられることじゃないですかね。旬のものは安くて美味しい、それを食べるのに、和食はやっぱり適していると思います。
──なるほど。季節ごとに、旬の食材を摂るのって、よき生活っていう気がします。そんな生活を送る手助けになるのが、『伝説の家政夫たけとさんが教える 修業いらずの料理人ごはん』(たけと著/KADOKAWA 4月2日発売)ですね!
たけと:はい。フライパン1つ、工程3つで出来るような和食レシピが、基本から応用まで網羅されていますので、ぜひ、一冊ご自宅において、今夜のおかずに迷った時に開いていただけると嬉しいです。
──一冊購入して、和食マスターを目指します! どうも、ありがとうございました!
【後日談】
たけとさんに習ったように、米を「洗う」から「研ぐ」に変えたところ、つやつやのもちもちに炊き上がるようになりました。基本って本当に大切……。
たけとさんのレシピ集を読んで、いま一度勉強し直そうと思います。
たけとさんの料理を実際に食べてみたいという方は
書いた人:タケダキョウコ
タケダキョウコ。東京生まれ。男性誌を中心に活動するフリーライター。夫と息子と犬と一緒に都内に住んでます。辛いものも甘いものも家メシも外食も大好き。趣味は塊肉を捌くこと。
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March 30, 2020 at 06:00AM
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伝説の家政夫・たけとさんに教わった和のストック食材「鮭のバター醤油焼き」が汎用性高すぎた - メシ通
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