ソフトバンクと日本ハムがよもやの大型連敗に見舞われた。7月下旬にかけてソフトバンクは54年ぶりの12連敗、日本ハムは球団ワーストにあと1と迫る39年ぶりの13連敗。ともに長いトンネルから脱した時は、かつてないほど1勝の重みをかみしめたことだろう。
22日、ほっともっとフィールド神戸でのオリックス―日本ハム戦を解説で訪れた際、日本ハムの八木裕打撃コーチが嘆いていた。「内野ゴロでもいい場面でゴロが打てないんですよ」。三塁に走者がいて相手内野陣が前進守備を敷かず、内野ゴロでも1点が入る状況。打者にとってこれほど気楽な場面はないが、連敗中の呪縛のせいか、なかなか転がすことができなかったという。
連敗しているのは、それだけ調子の悪い打者が多いということ。打てない分は個々の工夫や作戦で補うしかない。内野手が後ろに守っていればバント、あるいはボールの上っ面をたたくことに集中してとにかく転がす。四球で走者が出ればヒットエンドランなどで得点圏に進める。
じっとしていても試合の流れはやって来ない。劣勢の時ほど自分たちから動くことが重要だが、負けが込んでいる時の新庄剛志監督は、シーズン序盤ほどは動いていなかったように思う。作戦が裏目に出て負ければ「あそこで動いたから」と言われかねない。選手や監督の手足を縛る連敗中の空気は、相手チーム以上に難敵といえる。
それでも、そういう時こそ動いて、負けても監督の責任になるようにすることが大切だ。安打頼みの野球では、負けた時に「あそこで打てなかったから」と選手の責任になってしまう。調子が悪くて悩んでいるところに、連敗の責任まで背負わされるのはつらい。批判が全て監督に向かうようにすれば選手の負担が減り、トンネルを抜ける日も近づくというものだ。
監督がどういう姿勢を見せるかという点では、試合後の取材対応も大事だ。負けた時こそ報道陣の前で「あそこでこういう作戦を取ればよかった」と自らの非を認めたり、「負けたけどいいゲームでした」と前向きなコメントを発したりすれば、選手は「俺たちを守ってくれている」と思える。
私が創設初年度の楽天の監督を務めた2005年は38勝97敗1分けで最下位に終わった。11連敗を2度経験するなどしたが、どれだけ負けても取材対応は欠かさなかった。できたばかりのチームをどのような思いで指揮しているかを伝えることも、監督の仕事の一つと考えていたからだ。取材拒否をしたことはないが、あまりに負けるのでいたたまれなくなったのか、報道陣の方から「監督、きょうはもう結構です」と取材を遠慮されたことがあった。
新庄監督とソフトバンクの藤本博史監督は連敗中に取材対応を断ったことがあったようだが、たとえ空元気でも監督が話すことで選手は救われる部分があり、歯を食いしばって対応してほしかった。負けた時の話にこそ人間性が出るし、野村克也さんのぼやきのように、負けてもファンを楽しませる側面もある。
もっとも、前身球団を含めて長い歴史のあるチームを率いる藤本監督と新庄監督は、新興の楽天を率いた時の私とは比べものにならないプレッシャーを感じているだろう。伝統を背負う身としては、あれだけ負ければコメントしたくないと思うのも致し方ないのかもしれない。つくづくトップの責任の重みを感じる。
負けている時の打開策は容易には見つけられないが、大事なのは気の持ちようだろう。試合に勝つと殊勲者がヒーローインタビューに呼ばれる。それを見た選手は「次は俺が目立ってやる」と競争心を駆り立てる。これが負けが込むと「あそこで俺が打っていれば……」などと過ぎたことを引きずり、なかなか前向きになれない。
だが、主力選手はともかく、若手はチームの成績を気にする前に、いかに自分が活躍するかを考えた方がいい。まずチーム内の競争に勝つという姿勢で緊張感を持っていれば、いざ打席やマウンドに立った時、相手との勝負のプレッシャーはさほど大きく感じないだろう。同僚との勝負に勝とうという意識がチームのエネルギーになり、勝利をつかむ原動力になる。背負い込むのでなく、何かをつかみにいく積極的な姿勢が、逆境から抜け出すポイントだろう。
(野球評論家)
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