
新型コロナウイルスの集団感染が発生した県岐阜商は、絶望の淵からはい上がった。夏の甲子園出場が認められ、9日の第4日第4試合で社(兵庫)との1回戦に臨む。ベンチ入りメンバーは10人も入れ替えを余儀なくされた。悪夢の5日間で、県岐阜商に何が起こり、聖地でどう戦うのか。
県岐阜商は大会前のPCR検査は選手全員が陰性だった。悪夢の始まりは、組み合わせ抽選会があった後の8月3日夜だ。体調不良者が発生し、4日にはチーム内に感染が広がった。5日にメンバー4人と補助員3人が陽性と判定され、大会本部から集団感染と判断された。6日は陽性者が計14人まで拡大した。
夏の甲子園のガイドラインでは、集団感染の際は「試合日程の変更で対応できる場合は、当該試合の日程を変更することもある」とあったが、登録選手の入れ替えなどは明記されていなかった。
主将の伊藤颯希(3年)は「正直、甲子園でできるのかと思いました」と率直に不安を明かした。チーム内では絶望感が漂い、「すいませんでした」とむせび泣く選手ばかりだった。感染しなかった選手も、鍛治舎巧監督は「食欲が落ちている」と感じたという。

一筋の光がさしたのは6日だった。主催者が集団感染と判断したチームも登録選手の入れ替えなどで出場できるようにガイドラインを改定した。鍛治舎監督は「異例の対応。何とか参加できる道はないかと検討してもらい、感謝申し上げたい。ありがたい」と何度も感謝を述べた。
試合前日の8日、入れ替えの10人を含むチーム全員が陰性をPCR検査で確認され、出場が決まった。鍛治舎監督は「(選手は)天にも昇るような気持ちだと思う。私も九分九厘難しいと思っていた」と喜んだ。ただ、エースの井上悠投手(3年)や昨夏の甲子園で登板した小西彩翔投手(3年)の二枚看板をはじめ、村瀬海斗捕手(3年)、内藤大輔遊撃手(3年)、後藤耀介中堅手(3年)ら、岐阜大会で主力だったセンターラインが離脱した。
代わりに加わったのは2年生7人と1年生3人。レギュラーメンバーがそろわず、練習が不十分で、チーム状態は万全とはほど遠いのは間違いない。
それでも、日ごろの練習が紅白戦中心で、練習試合もほとんどが1日2試合のため、鍛治舎監督は「学年に関係なく試合をしてきた。甲子園だが、うまくもっていけばそこまでハンディはない」と前を向く。

伊藤の元には、療養中の選手から続々とメッセージが届いた。「一緒に頑張ってきたのに、最後の最後にごめん」「いいキャプテンだったぞ」。謝罪や感謝、不安を表し、すでに引退直後のような内容もあった。
だが、伊藤はこう答える。
「俺たち、頑張るで。お前らも早く治して、良い状態で戻ってこられるようにしろ」
初戦を突破すれば2回戦は14日の見通し。伊藤は「もしかしたら2回戦から(療養中の選手が登録の再入れ替えで)帰ってこられるかもしれない」と望みを捨てていない。
「いま残っているメンバーで確実に勝って、全員で野球ができるように。全力で立ち向かうだけです」。部員88人全員でつかみ取った夏を、簡単には終わらせない。【森野俊】
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