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フードロス削減の切り札?自分でレトルト食品が作れる「小型レトルト釜」がすごいぞ - メシ通

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洗濯機サイズの装置でレトルト食品が作れる?

カレーやパスタソース、ハンバーグ、お粥など、世の中には沢山のレトルト食品があります。常温で長期間保存ができて、温めればすぐに美味しく食べられる。大変便利なものであり、普段の食事にはもちろん、非常食として家に保管している方も多いかと思います。

そんな身近なレトルト食品ですが、どうやって作っているかご存じでしょうか?

通常ならば、真空包装した食品を特殊な「レトルト釜」を使って高圧高温で殺菌することにより実現しているのですが、気軽に設置や使用ができるような装置ではありません。

しかし、飲食店の調理場にも置ける、大型洗濯機程度のサイズの小型レトルト釜を発見しました。これを使えば、オリジナルのレトルト食品を作ったり、出荷先を失って余ってしまった魚や野菜を、食材として常温長期保存できるように加工できます。

そこで今回は、レトルト釜の製造会社を訪ねて、実際にレトルト食品作りに挑戦してきました。

最大45個のレトルトカレーを同時生産!

小型レトルト釜を製造している会社は数社ありますが、今回訪ねたのはそのうちの1社で、滅菌器などの製造・販売を行う「株式会社平山製作所」埼玉県春日部市にある本社ショールームで、実際にレトルト食品を作ってもらいながら話を聞きます。

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▲平山製作所 本社工場

対応していただいたのは、営業部の中村さん。会社の概要や取り扱う製品についてお聞きし、小型レトルト釜を見せていただきました。

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▲新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、マスク着用での取材となっています

f:id:exw_mesi:20200725204114p:plain中村さん:当社はオートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)や高加速寿命試験装置などの製造・販売・修理をおこなっています。創業は大正13年(1924年)で、もうすぐ100周年を迎えます。

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▲医療、バイオ関係の方なら一度は見たことがあるオートクレーブ

f:id:exw_mesi:20200725204114p:plain中村さん:オートクレーブは、医療や製薬、バイオなどの現場で使われる、器具や培地、試薬などの滅菌を行う装置です。そのような業務にかかわる方なら、当社の青い蓋の装置を見たことがある方がいらっしゃると思います。

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▲高加速寿命試験装置。昔勤めていた会社で使っていた。また見られるとは

f:id:exw_mesi:20200725204114p:plain中村さん:こちらは高加速寿命試験装置(HAST装置、 PCT装置)です。中に入れた部品に高い温度や湿度をかけて負荷をかけることで、何年、何十年と長期間使用される部品の寿命を短い時間で測定します。

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▲平山製作所製、小型レトルト釜。W602×D679×H1064mm、価格は税込319万円(2020年8月現在、最新のHLM-36EFの場合)。家庭の洗濯機置き場に入るサイズ

f:id:exw_mesi:20200725204114p:plain中村さん:そして、こちらが小型レトルト釜です。この装置で250mlサイズのレトルト袋(通常のレトルトカレーなどに使われているサイズ)なら、一度に45個程度作れます。
主なユーザーは、食品加工業者や大手食品メーカーの開発室の方ですね。小型で設置コストがかからず、少量生産や小ロットのテスト品、サンプル品の製造に利用されています。
個人では、飲食業の方や農水産物の加工を行う方からの購入もありますよ。

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▲釜内部。食品を入れるカゴは3段入ります

f:id:exw_mesi:20200725204114p:plain中村さん:当社は長年培ってきたオートクレーブの技術があるので、その技術を活用して小型レトルト釜を作りました。
オートクレーブとレトルト釜では、容器が破裂しないように圧力コントロールを行う点と、冷却装置を積んでいる点が異なります。また、当社の装置はレトルト食品の殺菌条件で重要となるF値の制御が可能なので、安全にレトルト食品の製造ができます。

※F値:レトルト食品の殺菌強度を示す値。レトルト食品は、食品衛生法で「F4」以上に相当する殺菌が義務付けられている。食品の中心温度が121度で1分間加熱されたのと同様の状態を「F1」とすると、「F4」は真空パックなどの空気が無い状態で繁殖し、耐熱性も高い、食中毒をおこすボツリヌス菌芽胞を死滅させることができる条件。 

殺菌により常温での長期保存が可能&旨味を逃がさず加熱調理

実際に、この小型レトルト釜を使ってレトルト食品を作ってもらいました。まず試したのは、テスト用に材料を用意していただいたサバの味噌煮。

千葉県名産のサバを使用したレトルト食品をこの装置を使って作っている方がいるそうで、同じレシピで作ってもらいます。

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▲手軽にサバの味噌煮がレトルトにできるならば、家庭の味もレトルト保存できるかも

レトルト食品作りでは、最初に真空包装機を使って食品を真空パックにします。それを装置に入れて高圧高温で加熱殺菌します。

レトルト食品は、「下処理済みの半調理品を入れて加熱殺菌時に調理が仕上がるようにする場合」と、「既に調理済みの物を入れて殺菌だけ行う場合」があります。それぞれのケースによって、加工にかかる時間や設定温度が変わってきます。今回は前者のパターンです。

※「レトルトパウチ食品品質表示基準」では、「レトルトパウチ食品(一般的には「レトルト食品」)」と表記する場合は、使用する袋が気密性、遮光性を持っていないといけません。透明な袋を使う場合は「加圧加熱食品」という表記になります。
食品衛生法上は「レトルト食品」も「加圧加熱食品」も「容器包装詰加圧加熱殺菌食品」となり、同様の製造基準で作られ、殺菌は同様に行われているので、透明でも安全性は変わりません。今回は透明な袋を使用していますが、記事上では一般的に呼ばれる「レトルト食品」で名前を統一しています。

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このレトルト釜には、レトルト加工中の食品の内部の温度を計測するセンサーがついています(食品内部に直接センサーを差し込むので、計測に使った物はレトルト食品としては使えません)。

加熱時間や温度の条件が決まっていたら、内部温度の計測を行わずに加工することも可能になります。ただ、食品は物によって大きさや形が変わりやすいので、計測を毎回行う方が加熱不良などの失敗を出す率が下がるそうです。

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蓋を閉め、加工条件を入力してスタートさせれば、あとは加熱・加圧→殺菌調理→冷却までの一連の処理を自動で行ってくれます。サバの味噌煮の場合は、スタートから完成まで1時間程度かかります。

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これでレトルトのサバの味噌煮が完成。

調理済みの状態なので、袋から出せばすぐに食べられます。もちろん、温めて食べても問題ありません。このサバの味噌煮の場合、常温でも数ヶ月間は保存できて、美味しく食べられます。

レトルト食品が常温で長期保存できるのは、沢山の保存料を使っているからと思っている方もいるかもしれません。

しかし、それは違います。真空状態にして高圧高温処理することで、空気のないところでも繁殖できる菌も含めて殺菌しているからです。そういった意味で、安心、安全な食品と言えます。

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▲できあがったサバの味噌煮。身がふっくらとしていて、ゆっくり時間をかけて加熱をしたかのように味がよく染みています。高圧高温による処理なので、圧力鍋を使った料理のような効果を生むのかもしれません

例えば無農薬栽培の野菜を、添加物を使わずに調理した状態で安全に長く保存したいという場合も、レトルト食品は正に最適な保存方法といえます。密封状態で加熱するので、風味や旨味もそのまま閉じ込めることができます

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昔のレトルト食品は、金属臭いような独特の風味がついて嫌われることもありました。しかし、最近はレトルト袋の素材の性能が飛躍的に上がり、そのような問題は少なくなり、保存期間も従来よりも延びたそうです。今どきのレトルト食品はあなどれません。

しかも、この小型サイズのレトルト釜でできるのであれば、活用範囲も非常に広がります。

レトルトがフードロスや介護の現場を救う

中村さんに小型レトルト釜の最近の動向と、将来の展望についても聞いてみました。

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▲近所のスーパーで販売されていたトウモロコシも、持ち込んでレトルト化してもらいました

f:id:exw_mesi:20200725204114p:plain中村さん:製品としては15年ぐらい前からあったのですが、当初それほど販売数はありませんでした。転機になったのは、東日本大震災あたりからです。食品の保存・備蓄などに注目が集まり、販売数も伸びていきました。

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▲加熱処理をしてあるのでこのまま食べられる。もちろん常温で長期保存可能

f:id:exw_mesi:20200725204114p:plain中村さん:近年では、食品を作りすぎて余って廃棄する「フードロス」の削減手段としても注目され、年10%ぐらいで販売数が増加しています。
コロナウイルスの影響が拡大した2020年の春ごろからは、個人の飲食店から「オリジナルのレトルト食品を販売したい」などの問い合わせも増加していますね。

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▲味も香りも濃く、ただ茹でたものよりも美味しく感じる

f:id:exw_mesi:20200725204114p:plain中村さん:レトルト釜による調理は、真空パックにしてからの加圧・加熱なので、調理の際に旨味を逃がさない効果もあります。高圧加熱なので、圧力鍋による調理のような効果も見込めますね。
食品によって、長期間美味しく食べられる条件を調べる必要はありますが、食品加工方法の一つとして利用していただければと思います。

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▲筆者が経営する飲み屋で出している、塩麹モツ煮もレトルト化してもらいました

f:id:exw_mesi:20200725204114p:plain中村さん:今は食品製造業のユーザーの方が多いですが、今後は農水産加工業、総菜加工業の方にももっと使って欲しいと考えています。最近では、収穫時期がきて収穫したが、出荷先がなく廃棄しなくてはならない農水産物が多く出ていますから。
単純に、蒸したり、水煮にしてレトルト食品にすれば、計画的に生産できて、食材によっては数年保存ができますし農林漁業の6次産業化※を推進することにもなります。

※1次産業の従事者が農畜産物・水産物の生産だけでなく、食品加工(2次産業)や流通・販売(3次産業)にも取り組んで経済を活性化させること

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▲もともと煮込むモツ煮なので味の変化はほぼ無し

f:id:exw_mesi:20200725204114p:plain中村さん:他にも、介護業界などで使ってほしいと思っています。現場では、介護される人の体調に合わせた食事を色々用意する必要が出てきています。
それぞれに合わせたオリジナルのレトルト食品を作って、それを常温で保存しておけば、温めるだけで食事が提供できます。

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千葉銚子市で、平山製作所の装置を使って作られた、各種レトルト食品

f:id:exw_mesi:20200725204114p:plain中村さん:レトルト食品は、生産業者の方の努力で、どの商品も長期間安全に美味しく食べられるように加工されています。当社の製品が、食品製造業だけでなく、飲食業や農水産物加工業など、幅広い分野で活用していただければと思います。

今回の取材で、テストとして自身が経営する店で出している料理をレトルト化してもらいました。出来立ては味の変化を感じることなく、問題なく食べられました。長期保存に関しては、時間をかけて再確認が必要ですが、これならば個人でもレトルト食品が作れそうです。

今後、飲食店という経営の形が変革し、多様化してくることは間違いありません。確かに、作った商品をレトルト化できれば料理を届ける方法も増えそうです。

www.hirayama-hmc.co.jp

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November 17, 2020 at 07:30AM
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