2019年の秋、サンフランシスコのミッションストリートを歩いていると、バーナル・ハイツ・ヒルの麓にある平凡な駐車場に、見慣れない何かがあることに気づいた。それは、「料理の受け取りはこちら」というバナーの貼られた、駐車スペース3台分ほどを占める大型の白いトレーラーだった。
車体の側面には、「WokTalk」「Burger Bytes」「Fork and Ladle」「Umami」「American Eclectic Burger」「Wings & Things」と、アルゴリズムで生成されたかのようなレストランのブランド名とロゴがずらりと並んでいる。トレーラーは、ふたつの仮設トイレの後ろに置かれた発電機に接続されていた。
このトレーラーが使用している駐車スペースを以前まで確保していたのは、時間貸しレンタカーのスタートアップであるメイヴン(Maven)だ。メイヴンはゼネラル・モーターズから資金援助を受け、ギグエコノミー労働者向けにサーヴィスを展開していた(GMは2020年4月、メイヴンの事業を終了)。車体側面に開いた小窓からは、キッチンらしき設備のなかを動き回るふたりの男性が見える。発電機がブーンと音を立てている。揚げ油の香ばしい匂いが漂ってくる。仮説トイレには南京錠がかけられていた。
男性のひとりが窓のそばにやってきて、わたしに謝った。「すみません、直接注文はできないんです。事前にアプリから注文してもらわないと」
駐車場を「オンデマンドエコノミーのハブ」に
サンフランシスコでは、このトレーラーを含めた何台かのトレーラーが、マイアミに拠点を置くスタートアップのリーフ・テクノロジー(Reef Technology)によって運営されている。マーケティング資料によると、リーフは「一般的な駐車場を再構築」することで、「オンデマンドエコノミーの活気あるハブ」を創出する企業だそうだ。
電気、ガス、水道といったユーティリティーの導入と、「専用コンテナ」の設置を通じて、駐車場を再構成可能なコミュニティのハブに変えたいと考えている。そうして「変換された」駐車場の多くは、移動式キッチン、ビアガーデン、ポップアップストア、垂直農場、自動車修理場、医療施設、電気自動車のレンタルステーションなどに利用される。
「われわれが所有するトレーラーは、見た目に美しいとは言えません。でも実用性には優れています。どんな用途にも対応できますからね」。リーフの最高経営責任者(CEO)であるアリ・オヤルヴォはそう話す。「そこに食料品店を設置したければ、食料品店を設置すればいい。クリーニング店を設置したければ、クリーニング店を設置すればいいのです」
オヤルヴォは自身の会社をアップルになぞらえる。App Storeが開発者に対してiOSベースのツールやサーヴィスの作成と販売を可能にしているように、リーフは駐車場ベースのビジネスのインフラを提供しているというのだ。「アップルは接続性をプラットフォームとして利用していますが、われわれは近接性をプラットフォームとして利用しています。この近接性のプラットフォーム上で第三者アプリケーションを機能させ、顧客との距離を縮めているのです」
地域の次なるフェーズをつくる「ナノ倉庫」
オヤルヴォと、彼の3人の共同創業者のひとりであるウムット・テキンは、ノースウエスタン大学在学中の1990年代後半に知り合った。卒業後は共に経営コンサルタントの道へ進み、テキンはテクノロジー業界で、オヤルヴォはサプライチェーン最適化の専門家として働いた。
2013年、ふたりはマイアミでパークジョッキー(ParkJockey)という会社を起こす。当初の事業は駐車場の事前予約アプリの提供で、14年にはロンドンとシカゴに進出した。このアプリには駐車場経営者向けのバックエンドサーヴィスが組み込まれており、パークジョッキーはその後もガレージ管理用ソフトウェアの構築を進めていった。18年にはソフトバンク・ビジョン・ファンド(SoftBank Vision Fund)から10億ドル(約1,070億円)近くの資金を調達し、北米の2大駐車場事業者であるインパーク(Impark)とシチズンズ・パーキング(Citizens Parking)を買収した。
専門雑誌『パーキング・トゥデイ』では、発行人のジョン・ヴァン・ホーンが、パークジョッキーの台頭による業界への影響を次のように考察している。「わたしのもとには、全米の事業者からパークジョッキーに関する質問が殺到している」と、ヴァン・ホーンは書いている。「あの会社の正体は? どんなソフトウェアをつくっているんだ? まさか、わが社も標的にされているのか?」
パークジョッキーは買収を終えてまもなく、豊かな生態系を連想させる「リーフ(サンゴ礁)」へと社名を変更した。同社は現在、カナダと米国にある4,500の場所で──空港、病院、スタジアム、ホテルのほか、都心や住宅地でも──130万台分の駐車スペースを管理している(テキンは19年に退社した)。
リーフはかつて、自律走行車が主流になった世界、自動運転のシェアカーによって駐車場がほぼ不要になった世界を想定して自らを売り込んできた。世界がそのように変われば、駐車場を再利用する必要が出てくるというわけだ。
しかしここ2年間で、リーフの説明はいくぶんか変化した。同社の幹部が現在強調しているのは、「地域の次なるフェーズを創造する」こと、その手段として現地に物流やモビリティのハブを形成するのが自分たちの仕事だということだ。
リーフは2020年、「ナノ倉庫(nano-warehouses)」を運営する物流スタートアップ企業のボンド(Bond)と提携を開始した。ナノ倉庫とは、ラストマイル配送に利用可能なフルフィルメントセンターのことで、その多くは空き店舗に設けられている。いずれ都市生活者は、キャンパス内の学生センターに立ち寄ってから寮に戻る大学生さながらに、駐車場や空き店舗でアマゾンの荷物やデリヴァリーの夕食を受け取ってから帰宅するようになるかもしれない。
フード版多色ボールペンみたいなキッチン
だがいまのところ、リーフが注力しているのは食事の調理だ。これを最初の試みとして成功させ、それ以外の各種「用途」も将来的には実現可能であることを証明したいと考えている。モジュラーアプローチで駐車場を再利用するという実験において、リーフが最初に食事の調理を選んだことは賢明と言える。というのも、ここ数年でデリヴァリー業界は盛り上がりをみせ、「ゴーストキッチン」あるいは「ダークキッチン」と呼ばれるデリヴァリー専門のキッチンが人気を博しているからだ。
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August 24, 2020 at 05:00AM
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