勢いのある「ベストレストラン50」
食には様々なアワードやレストランガイドがありますが、近年最も勢いのあるものといえば「ベストレストラン50」。
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「ベストレストラン50」は「世界のベストレストラン50」「アジアのベストレストラン50」「ラテンアメリカのベストレストラン50」といった世界全体および地域別のアワードから構成されています。
投票者である世界中のフーディーたちが18ヶ月以内に訪れたレストランに投票し、1位から50位までランキングされるという画期的な仕組み。
世界各地の美食を求めて食べ歩いているフーディーズが投票するという特性から、最新のガストロノミーが色濃くランキングに反映されおり、非常に注目されています。
その影響力の大きさから、木村拓哉氏が主演したテレビドラマのTBS「グランメゾン東京」の中でも、「ベストレストラン50」は「トップレストラン50」として登場しており、私も記事で検証しました。
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そして、世界で耳目を集める「ベストレストラン50」の中でも2020年に特別注目したいのが「アジアのベストレストラン50」。
なぜならば、発表会が初めてこの日本で開催されることになっているからです。受賞セレモニーは3月24日に佐賀県の武雄市で行われ、世界を代表する料理人や影響力のあるフーディーズが一堂に会します。
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今年最初の記事でもグルメの注目として「アジアのベストレストラン50」を紹介しましたが、日本のチェアマンを務める中村孝則氏にインタビューしたので詳しく紹介しましょう。
中村孝則
コラムニスト
1964年神奈川県葉山町生まれ。ファッションからカルチャー、旅やホテル、ガストロノミーからワイン&シガーまで、ラグジュアリーライフをテーマに、執筆活動を行っている。また最近は、テレビ番組の企画や出演、トークイベントや講演活動も積極的に展開している。「世界のベストレストラン50」「アジアのベストラン50」日本評議委員長。剣道教士7段。大日本茶道学会茶道教授。ベストオブコロンビア大使
注目どころ
Q:「アジアのベストレストラン50」では、どこに注目していますか?
中村氏:最も注目しているのが1位争い。シンガポールの「Odette(オデット )」が連覇する可能性もありますが、前回4位のバンコク「Suhring(ズーリン)」も非常に素晴らしいです。日本勢では前回3位「傳」や前回5位「フロリレージュ」が最有力でしょう。「NARISAWA(ナリサワ)」も有力で、1位となれば1回目開催の2013年以来の快挙となります。昨年8位までのレストランはどこも1位を獲得するポテンシャルを秘めているでしょう。
Q:1位争い以外の注目どころはありますか?
中村氏:台湾のガストロノミーが非常に熱いです。昨年7位「Mume(ムメ)」や30位「Raw(ロウ)」は躍進するのではないでしょうか。「JL Studio(ジェーエルスタジオ)」など、新しいレストランがランクインする可能性もあります。親日国なので応援したいですね。
Q:日本で新しくランクインしそうなレストランはありますか?
中村氏:「INUA(イヌア)」や「Ode(オード)」といった日本のレストランも50位以内に入るかもしれないので、是非とも注目していただきたいです。
佐賀県での開催
Q:どうして佐賀県で「アジアのベストレストラン50」の発表会が開催されることになったのですか?
中村氏:過去にはシンガポール、バンコク、マカオで開催されましたが、まだ日本で開催されたことはありません。今回も日本を含めて世界のいくつもの都市が立候補した中で、佐賀県に決まりました。チェアマンは運営に携わらないので、私は開催地の選定には関わっていません。しかし、佐賀県が選ばれた理由は次の通りだと考えています。
アジアの玄関口であり、肉、魚介類、野菜といった食材も豊富で、有田焼といった素晴らしい食器もあること。食料自給率も非常に高く、SDGs(エスディージーズ)の観点からも今の時代に相応しい地域です。加えて、佐賀県が食を非常に重要視していて、協力的であったことも大きいでしょう。
※2016年度における佐賀県の食料自給率の概算値はカロリーベースで93%、生産額ベースで152%
※SDGs(持続可能な開発目標)とは「2030年までに達成すべき17の目標」
Q:佐賀県で開催されると、どのような影響がありますか?
中村氏:開催地には世界中から1000人近くのフーディーズが訪れます。影響力のあるフーディーズが佐賀県を中心とした各地で日本の食を体験し、発信することによって、非常に大きなイメージアップとなるでしょう。食は観光のキーコンテンツなので、インバウンドにつながります。食材の輸出にも寄与するのではないでしょうか。
最近の傾向
Q:上位になっているレストランの特徴は何かありますか?
中村氏:上位にランクインしているレストランは、積極的かつ上手に情報を発信していますね。フーディーズは実に様々なレストランに訪れています。料理はもちろん非常に大切ですが、楽しさや意外性といった体験をいかに提供できるかが重要ではないでしょうか。
投票者は10票のうち6票までしか所属している地域に投票できません。したがって、海外にいる投票者からの支持が重要となります。
Q:これからはどのような特徴のレストランが上位に入ってきそうですか?
中村氏:地方に注目しています。地方には素晴らしいレストランがたくさんありますが、あまり発信できていないので、まだ知られていません。和歌山や新潟、石川などにはよいレストランがたくさんあります。これからは地方のレストランも発信を始めて、より知られていくようになるでしょう。
Q:投票者については、何か傾向はありますか?
中村氏:チェアマンの私が投票者を選んでいますが、今はダイバーシティが重要となっています。今年から「世界のベストレストラン50」では、投票者の男女比が同じになることが定められました。
「アジアのベストレストラン50」ではまだそのように定められていませんが、実際のところ男女比はほぼ同じになっています。現代のガストロノミーでは女性の目線も非常に重要です。女性の料理人も、もっと増えてほしいと思います。
「ベストレストラン50」に対する疑問
Q:どうして最近はランキングに大きな動きがないのですか?
中村氏:投票者の25%が毎年新しくなる仕組みになっています。それでも、いくつかのレストランに票が集中してしまうのは、素晴らしいレストランであるということなので、仕方がないと考えています。
ただ、あまりにも流動性がなくなるのもよくないので、今年から「世界のベストレストラン50」では、1位になったレストランは殿堂入りすることになり、投票できなくなりました。「アジアのベストレストラン50」でも将来的に検討しています。
Q:どうしてホテルのレストランがほとんどランクインしていないのですか?
中村氏:ホテルの料理人もよく頑張っています。ホテルは立地や空間が素晴らしかったり、興味深いプロモーションを行ったりしているので、ハンディキャップを負っているとは思いません。
ただ、大きな企業なので、食材や調理方法であまり挑戦しにくい環境にあるのではないでしょうか。サービスもマニュアル通りではなく、もっと自由度が高くてもよいと思います。
料亭もランクインしていませんが、ホテルと同じような状況ではないでしょうか。
Q:大御所と称されるような料理人が世界に展開しているレストランがほとんどランクインしていないのは、なぜですか?
中村氏:アラン・デュカス氏のレストランはランクインしていますが、確かに他は少ないですね。投票者は20代から40代と比較的若いので、親和性の高い若い世代の料理人がランクインしやすいことはあるでしょう。ただ、上の世代の料理人たちが若いフーディーズを惹きつけられていないだけかもしれません。
Q:「Odette」と「傳」、「フロリレージュ」と「NARISAWA」など、どうして「アジアのベストレストラン50」と「世界のベストレストラン50」で、順位の上下が入れ替わっているレストランがあるのですか?
中村氏:そもそも「アジアのベストレストラン50」と「世界のベストレストラン50」とでは投票者が異なっています。「世界のベストレストラン50」では北米やヨーロッパの投票者が多くなり、傾向も違ってくるので、単純に比べることはできません。
これから
Q:今後ランクインしそうなレストランを知る方法はありますか?
中村氏:「ベストレストラン50 」公式サイトにある「Discovery(ディスカバリー)」を見ていただくのがよいと思います。フーディーズが関心をもっているレストランが紹介されているので、ここに取り上げられたレストランは将来的にランクインする可能性があるでしょう。ちなみに日本のレストランでは「INUA」「アビス」「クラージュ」「Ode」などが紹介されています。
Q:少し早いですが、来年の見どころは何かありますか?
中村氏:同じ国で2年連続開催されることが多いので、「アジアのベストレストラン50」発表会は来年も日本で開催される可能性が高いです。フーディーズが訪れた翌年にランキングへ反映されるので、再来年も含めて3年連続で注目していただきたいですね。
「ベストレストラン50」は食の祭典であるだけではなく、地方創生にも寄与するので、自治体の方々に関心を持っていただけたらと思います。
日本の食の素晴らしさを発信
「アジアのベストレストラン50」は3月24日に佐賀で開催されますが、「世界のベストレストラン50」は6月にベルギーのアントワープで開催されることだけが決まっており、詳細なアナウンスはこれからです。
「ベストレストラン50」はエンターテインメント性の高い美食の祭典として確立されており、美食の世界では影響力が極めて大きいだけに、日本の食の素晴らしさが改めて世界へと発信されることを期待しています。
それと同時に、もう少し欲をだして、初めてとなる日本開催で日本のレストランが久しぶりに1位になるというドラマティックな展開も期待したいところです。
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February 02, 2020 at 02:38PM
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