阪神は首位広島3連戦3タテに失敗し、3位に転落した。日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(40)は同点の状況から一挙4失点した8回裏の舞台裏に注目。投手交代の「間」が広島羽月に三盗への準備を与えてしまったと分析した。【聞き手=佐井陽介】

     ◇     ◇    ◇

阪神救援陣は同点で迎えた8回裏、広島羽月選手の足に屈した形です。無死一塁で代走登場。1死一塁から5番野間選手への初球に二盗を決めると、1死一、二塁から6番石原選手への初球に三盗まで成功させたから驚きました。最後は石井投手が2死満塁から暴投で決勝点を献上。ここからの1イニング4失点はあまりに重たすぎました。

バッテリーは決して無警戒ではなかったはずです。二盗に関しては直前の打席から散々けん制球を入れた末、外角直球で決められたモノ。羽月の足が勝ったとしか表現しようがありません。三盗にしても、初球にカーブを投げたから「無警戒だった」と断じるわけにはいきません。三盗も多いプレーヤー。三盗も頭にありながら決められてしまったのではないでしょうか。

三盗は島本投手から石井投手にスイッチした直後の1球目。この流れに野球の奥深さを感じました。投手交代の際には必ず投球練習が行われます。その間、走者はひそかにスタートのタイミングを計る準備ができます。おそらく羽月選手は投球練習間に「走れる」と判断し、スタートを切ったのだと想像します。この三盗で1死一、三塁となった時点で、流れは完全にカープ側に傾きました。

阪神目線で言えば、この日は暴投2つがそのまま失点に結びついてしまいました。捕手は球界屈指のブロッキングを誇る梅野選手。つまり、梅野選手でも止められないボールが2球あったということです。3連戦初戦から2連敗中の広島新井監督は3戦目、序盤から盗塁にランエンドヒットと積極的に動いていました。最後は救援陣が広島の「イケイケどんどん」な空気にのみ込まれた形です。

3タテで一気に1ゲーム差まで詰めたい阪神と、是が非でも3連敗だけは避けたかった広島。互いの意地と意地がぶつかり合った一戦、重圧をかけられ続けた投手陣を責める気にはなれません。甲子園に戻る5日DeNA戦は気持ちの切り替えが重要になりそうです。(日刊スポーツ評論家)

広島対阪神 8回裏広島1死一、二塁、羽月の三塁盗塁に複雑な表情の岡田監督(撮影・前岡正明)
広島対阪神 8回裏広島1死一、二塁、羽月の三塁盗塁に複雑な表情の岡田監督(撮影・前岡正明)