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立ち上がった料理人たち──コロナ禍で模索する飲食業界の今。 - VOGUE JAPAN

医療従事者を「食」で支える人々。

新型コロナウイルスとの戦いで疲弊している医療従事者の方々へ、無料でお弁当を配送をしているシェフたちがいる。きっかけは、フレンチレストラン「シンシア」の石井真介シェフが、4月6日にフェイスブックに投稿した一言だった。

「想像も絶する状態にあるフランスで、現地の日本人シェフ達が医療機関に差し入れをしたとの事。 誇らしいです!僕たちもやりたい!! だって今日本でも感染が1番広がってるのって医療機関従事者ですよね?命がけで働いてくれる人達に何かしたい!……」(※原文まま)

すると、まったく同じことを考えていた「サイタブリア」(レフェルヴェソンスなどのレストラン経営やケータリングサービスを行う)の石田聡社長と、交通広告を主に扱う広告代理店NBKの役員、寺田裕史さんが手を挙げ、意気投合。投稿の2日後にはミーティングが開かれ、プロジェクトチームが発足した。

さらに石井シェフがリードシェフを務める「シェフス フォー ザ ブルー」という海洋資源の枯渇に向き合う料理人のグループから、有志が参画することに。サイタブリアはキッチン、冷蔵車、そしてマンパワーを拠出、NBKは資金を調達やウェブ制作、病院からの問い合わせ窓口と、三者三様の力を発揮した。そして投稿から7日目には、弁当ボックスの配布が始まったというから、そのスピード感には驚くばかりだ。

メニューはシェフの専門分野を生かして作っている。モダンアメリカンの「ザ・バーン」米澤文雄さんは塩麴でマリネしたチキンをメインに、彩り鮮やかなサラダやスープを添えた弁当に。和食は「HIGASHIYAMA-Tokyo」梅原陣之輔さん、「後楽寿司やす秀」の綿貫安秀さん、「鮨えんどう」遠藤記史さん合作のばらちらし。中華は「慈華」田村亮介さんと「茶禅華」川田智也さんが考案した、特製麻婆豆腐と棒棒鶏を中心に、フレンチは「シンシア」石井真介さんが担当した、サステナブルな白身魚のベニエや山菜をのせたごはん。さらにエスニックは「サイタブリア」ケータリングシェフ奥田祐也さんによる、桜海老を使った香り豊かな春巻などの彩り鮮やかな弁当と、さまざまだ。非常時ではあっても、美味しいが大前提という、シェフたちの心意気が感じられる。

5月12日現在で、都内31の病院(のべ数)へと運んでいるそうだ。自分の店のやりくりだけでも手いっぱいというこのご時世に、完全なボランティアでの協力には、頭が下がる。

医療従事者を励まそうという試みは、他にも、ブルガリ ホテル アンド リゾーツの「ルカ・ファンティン」のルカ・ファンティンさん、「チョンプー(CHOMPOO)」などをプロデュースする森枝幹さんらも、それぞれ積極的に取り組んでいるようだ。

生産者、レストラン、客の新たな関係が始まる。

生産者とタッグを組んで新しい試みを実践しているのは、「アジアのベストレストラン50」で2020年は3位に入賞した「傳」の長谷川在佑シェフ。コースメニューに必ず組み込まれるサラダ「畑の様子」と同じ野菜を、「傳」が取り寄せている生産者、ルコラステーションの畝田さんから直接家に配送してもらえる。そしてサラダの作り方を長谷川さんが動画で配信。トレードマークの人参のスマイルを見れば、気が滅入りがちなステイホーム期間にもにっこり笑顔が戻ってくることだろう。

レストランが休業になれば、生産者も卸し先がなくなって困る。生産者とレストランの客をダイレクトにつなぐことで、客を喜ばすだけでなく、生産者を助けようというプロジェクトでもある。長谷川さんは、コロナ禍が収束してからも、この営みを続けるつもりだという。

「生産者から野菜が届くことで、食への興味も増すでしょうし、同じ素材で料理をすることで、家の料理とレストランの料理は違うものであるということがよくわかり、レストランへ行く楽しみも増すと思います」と長谷川さん。コロナ禍をきっかけに、生産者、レストラン、客の関係が双方向に変われば、素晴らしいではないか。

飲食は、重要な日本の観光コンテンツ。

5月8日、総理官邸にて菅官房長官と。左から、「Wakiya」の脇屋友詞さん、「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」の落合務さん、服部学園の服部幸應さん、菅官房長官、元参議院議員で日本フードツーリズム協会理事などを務める二之湯武史さん、「HAJIME」の米田肇さん、「更科堀井」の堀井良教さん。

最後は、三ツ星レストラン「HAJIME」の米田肇シェフの国への陳情だ。広く料理哲学を発信している米田さんのフェイスブックには、毎週、若い料理人や経営者から20~30件の相談が寄せられるという。3月に入り「経営が厳しい」、「このままでは倒産してしまう」の声を多数聞き、これは早急に動かないと大変なことになると、すぐに行動に移した。

まず一つが料理関係者の声を署名として集めること、そしてもう一つが政府のトップに現在の窮状を説いて回ること。岸田政調会長、世耕経済産業大臣、西村経済再生担当大臣・新型コロナ対策担当大臣らに、飲食業界の窮状を切々と訴えた。

“食”は日本の観光資源として、最重要なコンテンツの一つという認識があるのであれば、こうした有事には、家賃や人件費の補助が必要であるということを説いて回ると同時に、16万人分の署名を集めた。結果、米田さんの努力が認められ、5月11日には晴れて予算案を通過。14日には、雇用調整助成金の上限額が15,000円に拡充されることが発表された。また、家賃負担の給付金も新たに創設されることになった。

他にも、ステイホームをできるだけ楽しく、明るく過ごすためにと、テイクアウトメニューを始めたり、家で簡単にできるメニューを動画に挙げているシェフも多い。また、未来の食事券を販売するレストランもある。そうした食事券を購入するというのも、私たちにできる応援の一つだ。一日も早い収束を祈るとともに、苦境を乗り越えた飲食業界がさらに輝ける存在になることを、願ってやまない。

※記事は5月14日現在の状況です。

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Text: Hiroko Komatsu

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